第14回 研究大会
1.大会趣旨
現在、内閣府に社会保障制度改革国民会議が設置され、社会保障制度の再編にむけて議論が行われている。この会議において、今後の医療・介護の提供体制のあり方として、「医療、介護、看取りまで継ぎ目のない地域医療・包括ケアを目標として各地域の医療・介護需要ピーク時までの地域医療・包括ケアビジョンを作成すべき。」として「地域包括ケア」の構築が重要視されている。
一方、厚生労働省地域包括ケア研究会の2012年度報告書では、2012年の介護保険制度改正をはじめとする様々な施策によって地域包括ケアシステムの構築が進みつつあるが、「現場レベルにおける地域包括ケアシステムの構築は緒に就いたばかり」との認識が示され、今後のシステム構築に向けてさらなる取り組みが必要であると指摘している。
こうした要請に対し、共助や公助の枠組みでは、地域包括ケアシステムの構築が進められつつあり、多職種協働による包括的・継続的な支援が展開され、専門職によって扱われる高度で多岐にわたる情報も的確に共有される努力や工夫が始められている。しかし一方で、自助力を高める必要のある当事者・要援護者や互助を担うとされる地域住民は、こうした情報から取り残されてしまっていないだろうか。
前述報告書においては、「『共助』『公助』を求める声は小さくないが、少子高齢化や財政状況を考慮すれば、大幅な拡充を期待することは難しい」とし、「その意味でも、今後は、『自助』『互助』の果たす役割が大きくなっていくことを意識して、それぞれの主体が取組を進めていくことが必要である。」と指摘されている。また、「本人の選択・心構え」が地域包括ケアシステムの土台となる考え方も示している。これらの指摘は地域包括ケアシステムにおいて、自助や互助の捉えなおしや当事者の視点が今後より重要になることを示唆している。
こうした当事者の視点を引き出すためには、要援護者自身や地域住民が知るべき・活用すべき情報を明らかにすると同時に、専門職等と共有すべき情報の範囲を見定めておく必要がある。これは、現在、議論がすすめられている、「社会保障・税番号制度」と連動し、どのような情報を付加的に、「自助・互助・共助・公助」の中で扱うかということにもつながる。
加えて、現在検討が進められている2015年介護保険改正において、「要支援者」対応が一般高齢者施策化される可能性がでているが、そうなると、自助・互助の部分が担う役割は急速に拡大することが予測される。また、要介護高齢者に限らず、引きこもりや孤立、多重・多層の支援が必要な家族の増加(要介護高齢者と障害のある子どもの世帯、課題を抱える子どもと障害のある親の世帯など)も大きな問題になっており、その発見・見守り・ニーズ対応とともに、彼ら自身の自助力や地域住民の互助力の増進(エンパワメント)が求められている。
つまり、自助・互助の活動と公助・共助(専門職・行政等)の活動の間で情報連携・情報共有が求められることになるが、一方で、そこには個人情報やプライバシーが「壁」となって立ちはだかる可能性も高い。
そこで、今回の介護福祉情報学会では、今後の税と社会保障の一体改革下において、福祉介護情報を政策やサービス提供サイドからのみ捉えるのではなく、当事者や住民意識を高めるための情報のあり方とその活用方策並びに課題を検討することとする。
2.テーマ
「地域包括ケアにおける情報連携を考える~当事者意識を高めるための情報のあり方に焦点をあてて~」
3.主催
日本福祉介護情報学会
4.開催校
5.日時
2013年12月1日(日) 10時00分~17時00分
6.会場
立教大学【会場:立教大学池袋キャンパス14号館 D302教室・D401教室・D402教室】
■住所:〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
■電話:03-3985-2202
7.プログラム
9:30~ 受付開始【会場:立教大学池袋キャンパスD401教室】
10:00~12:00 自由研究発表【会場:立教大学池袋キャンパスD302教室・D402教室】
12:00~12:50 昼食
12:50~13:20 学会総会【会場:立教大学池袋キャンパスD401教室】
13:20~13:30 開会挨拶【日本福祉介護情報学会代表理事 高橋紘士氏】
13:30~14:00 基調報告【日本福祉介護情報学会副代表理事 森本佳樹氏】
14:00~14:10 休憩
14:10~17:00 シンポジウム【会場:立教大学池袋キャンパスD401教室】
【テーマ】地域包括ケアにおける情報連携を考える~当事者意識を高めるための情報のあり方に焦点をあてて~
【シンポジスト】
■「ふるさとの会」の実践からみる当事者ニーズの発信方策(仮題)
・滝脇憲氏(NPO法人 自立支援センターふるさとの会理事)
■地域ケアにおける利用者情報の把握と共有(仮題)
・山崎孝博氏(株式会社NTTデータ・会員)
■地域住民のエンパワメント方策と情報の役割(仮題)
・早川郁子氏(立川市社会福祉協議会)
■ソーシャルキャピタルのネットワーク化と情報共有の視点(仮題)
・山村良一氏(横浜市南区中村地域ケアプラザ)
■地域包括ケアシステム構築における住民・地域社会の役割(仮題)
・笹井肇氏(武蔵野市役所)
【コメンテーター】林恭裕氏(北翔大学・学会理事)
【コーディネーター】高橋紘士氏(国際医療福祉大学・学会代表理事)
17:00~ 次回研究大会について
17:30~ 懇親会